自我機能を回復するためのリストカット【自我機能を回復するためのリストカット】 見捨てられ感から来る空虚さが高じてくると 自分が自分でないような感覚と言いますか 自分が非現実的な世界にいるように感じられてくることがあります このような精神状態から「我に返る」ために 手首を切ることもあります あるいはもっと進んで解離状態となり 催眠術にかかったようなトランス状態から手首を切ることもあります そして、血の流れる出る手首を見て初めて我に返ったりします その後は、すべてをやり終えたとでも言うような 非常に安らかな精神状態となり まるで満ち足りたような満足感を示したりします 後で本人に手首を切ったときの状況について聞こうとしても トランス状態にあったために何も覚えていなかったりします リストカットをする人たちは 空想ではなくて現実にこの世から見捨てられてしまったように 思い込んでしまいます そして、催眠術をかけられたようになってしまい 本当に手首を切るのです リストカットという極限状態への自己陶酔も 自分が自分であることを確認するための手段となっているのではないかと思います このような自分自身を取り戻そうとする試みは 自分の存在感が希薄になった時に 手首の傷痕について周囲の人に語るという形で現われたりもします 手首の傷だけが 自分が自分であることを証明する唯一の証拠となっているのです ですから、手首にいくつも刻まれた傷痕に 精神的に依存したような状態になったりするのです ちょうど軍人が胸に付けた勲章を誇りに思うように リストカットを繰り返す人たちは 非常に屈折した形ではありますが 傷痕を精神的な苦しみから生み出された勲章であるかのように思ったりします 本人にとっては、傷痕や薬を誇示することが 精神的な空虚さに対抗するための唯一の手段であり 心の拠り所ともなっているのです ですから、周囲の人から見ると 不幸を自慢しているようなわざとらしさを感じることもありますが 本人にとってはやむにやまれぬ行為なのです |